抄録
トリプトファン(Trp)、リジン、メチオニン等の必須アミノ酸を高含有化した飼料イネの開発に当たっては、導入形質の安定的な発現をはじめ社会受容の確保、経済性、安全性等様々な要素を考慮することが必要である。我々は、これまでにTrp生合成系のキー酵素であるイネアントラニル酸合成酵素(AS)αサブユニットのフィードバック制御領域を改変した遺伝子(OASA1D)を開発し、これを高発現させた形質転換イネは、遊離Trpを蓄積することを明らかにしてきた。さらに、直接導入法の一つであるウイスカ法を用いることで、ベクター配列を含まないカセット領域のみが導入された形質転換体作出を行なってきた。
本研究では、イネ由来遺伝子カセット領域のみを持ち、抗生物質耐性マーカーおよびベクター配列フリーの形質転換体系統を作出するために、緑色組織強発現プロモーターであるイネ由来ルビスコアクチベースプロモーター(pRbcAc) と目的遺伝子OASA1D およびASαサブユニット遺伝子(OASA1) のターミネーター領域(asa1T)からなるpRbcAc::OASA1D-asa1T 発現カセットを構築した。本発現カセットをウイスカ直接導入法によりp35S::HPT-nosT 発現カセットと共にco-transformationして形質転換体を作出し、導入遺伝子のコピー数、後代における遺伝分離によってHPT が排除された選抜マーカーフリー系統の出現頻度及び、Trpとそれ以外のアミノ酸含量への影響等について解析した。