抄録
チトクロムc8はチトクロムc2同様、光合成の電子伝達系で働く電子伝達体である。R. gelatinosusの可溶性光合成電子伝達体はこれまで、HiPIP、高電位(+295mV)および低電位(+65mV)のチトクロムc8が知られてきた。本研究ではこれら3種類の電子伝達体を欠損させた組み替え株から、光合成条件でも生育速度が野生型に近くなる復帰突然変異体を得た。変異株の可溶性画分には、約10kDaのヘムタンパク質の大量発現が認められ、精製したところ、α帯の吸収ピークが552nm、+280mV付近に酸化還元中点電位を持つc型チトクロムであった。野生型の膜画分との再構成実験により、このチトクロムによる膜結合型チトクロムの再還元も確認された。N末端アミノ酸配列をもとに該当遺伝子を含むクローンを得、一次配列を決定したところ、このチトクロムは。R. gelatinosusの高電位チトクロムc8に最も高い相同性があり、チトクロムc8のイソ型と推定した。これら二つの高電位チトクロムc8は、周辺遺伝子の配列情報から、亜硝酸還元にも関わることが推察された。しかし。R. gelatinosusには硝酸還元能は知られておらず、亜硝酸還元能についても報告例がない。今後は遺伝子欠損変異株を作成し、光合成と他のエネルギー獲得系を含めた電子伝達系のネットワークでの生理的役割について考察する。