抄録
クロロフィル合成の第一段階であるMg-キラターゼは、CHLI, ChlD, ChlHの3つのサブユニットから構成され、その反応にはCHLIによるATP加水分解が必須である。シロイヌナズナのCHLIには2つのアイソフォームCHLI1、CHLI2が存在する。CHLI1とCHLI2は非常に似た遺伝子発現様式を示すが、これまでCHLI2はMg-キラターゼ複合体において殆ど機能しないと考えられていた。我々は、シロイヌナズナのCHLI1がチオレドキシン(Trx)の標的タンパク質であり、レドックス制御によりそのATPase活性が調節されることを報告した。今回、CHLI2について解析を行った所、CHLI1よりも低いVmax値および高いKm ATP値を示すATPase活性を有することがわかった。TrxによるCHLI2のレドックス制御を調べたところ、SH基修飾試薬AMSによるバンドシフトが観察され、また、ATPase活性もTrxにより制御された。CHLI1変異体(cs)とCHLI2変異体(CSHL_GT13937)を交配し、csホモ接合体と同じpale-green表現型を示す株を選抜したところ、F2はcsと同程度のpale-green表現型を示す株からほとんどalbinoに近い株までの3段階に別れ、分離比はおよそ1:2:0.8であった。PCR解析の結果、csホモ接合体ではCHLI2変異体は半優性であることが示され、CHLI2が植物体でMg-キラターゼ複合体において実際に機能することが示された。