抄録
海洋性珪藻Phaeodactylum tricornutumの葉緑体carbonic anhydrase(PtCA1)は核にコードされ、環境CO2濃度変化に応じて、転写レベルで発現制御されている。先行研究からptca1プロモーター(Pptca1)は転写開始点から上流-70~-10領域がCO2応答性のコア領域であり、そこに含まれる1つのcAMP応答配列(CRE1)と1つのp300結合配列(p300bs)がCO2応答性シスエレメントであることが報告されている。本研究では、各シスエレメントを組み合わせることにより、CO2応答性制御にかかわるプロモーター構造のモデル化を目指した。CRE1およびp300bsを、GUS遺伝子を融合したPptca1最小領域(mPptca1)に直接連結し、珪藻内でのCO2応答性を解析した結果、CRE1の連結によりGUS発現にCO2応答性が現れたが、p300bsを連結しても応答性は現れなかった。このため、CO2応答性は主にCRE1が担っていることが示唆された。一方、CRE1、p300bs近傍、およびその上流に、互いに逆向きに配置する3つのリピート配列の存在が確認され、これがPptca1のCO2応答性を担っている可能性が考えられた。CRE1、p300bsおよびこれら3つの配列を組み合わせてモデル化を試みた結果を報告する。