抄録
植物の硫黄欠乏応答の制御機構を調べるため、硫黄欠乏応答性プロモーターGFPを持つシロイヌナズナを利用して、硫黄欠乏応答に異常の見られる変異株の単離、解析を行っている。今回はsulfur-deficiency-insensitive 1 (sdi1)の解析について報告する。sdi1-1は、硫黄欠乏応答の指標であるGFP蛍光が、硫黄十分条件で野生型株より強く欠乏条件で弱い変異株であった。硫黄同化に重要なAPR1などの硫黄欠乏による遺伝子発現誘導の程度がsdi1-1では野生型株より小さく、また、野生型株で硫黄欠乏により増加するO-アセチルセリンやGly、Glnなどの遊離アミノ酸もsdi1-1ではあまり変化しなかった。原因遺伝子がマッピングされた5番染色体の48 kbの領域にはフェレドキシン依存性グルタミン酸合成酵素GLU1が存在し、sdi1-1ではGLU1の塩基配列に変異が見つかった。GLU1遺伝子に変異を持つ独立に取得された変異株でも、APR1などの遺伝子発現やアミノ酸蓄積がsdi1-1と同様に硫黄欠乏条件で誘導されなくなっていることを確認した。GLU1は野生型株で硫黄欠乏時に発現が抑制された。これらの結果からSDI1はGLU1であり、GLU1は硫黄欠乏応答にも重要であることが示唆された。光呼吸や窒素同化に重要であるとされるGLU1と植物の硫黄欠乏応答の関係について議論したい。