抄録
ニンジン不定胚発生阻害因子4-hydroxybenzyl alcohol(4HBA)は、胚発生能力を有する細胞(embryogenic cells)より放出され、液体培養時には不定胚発生を阻害する。我々は、2007年度年会において、胚発生能を誘導したニンジン実生胚軸を固形培地上で培養した際、4HBAの類縁化合物であるvanillyl alcohol(VA)が不定胚発生を阻害せずにむしろ促進することを報告した。組織学的観察、および胚のマーカー遺伝子の発現解析の結果は、4HBAおよびVA が初期の胚発生過程を阻害し、その後の胚発達は促進することを示唆していた。そこで、モデル植物であるシロイヌナズナを用いて、不定胚発生への4HBAおよびVAの阻害・促進効果について調べた。その結果、シロイヌナズナ吸水種子からの不定胚発生は、1x10-6 Mの4HBAで阻害され、1x10-5 MのVAによりわずかに促進された。一方、ニンジン不定胚形成について、不定胚誘導時の一定期間のみに4HBAおよびVAを与えることで、阻害・促進作用を示す時期の特定を試みている。