抄録
プトレシンやスペルミジンに代表されるポリアミンは,多くの生物に存在する低分子塩基化合物で,多面的な生理活性を持つことが知られている。シロイヌナズナの花茎の伸長に特異的な欠損を示すacaulis5 (acl5)変異株の原因遺伝子ACL5は,これまでスペルミン合成酵素をコードしていると考えられていたが,最近になってスペルミンよりもその構造異性体であるサーモスペルミンを合成する酵素をコードしている可能性が示唆された。
acl5変異株に外部からポリアミンを加えてその影響を調べたところ,スペルミンでは茎の伸長の回復が見られなかったが,サーモスペルミンを与えると不完全ながら花茎の伸長が回復することが確認された。遺伝子発現を調べた実験では,サーモスペルミンを加えてから時間を追うごとにacl5変異株におけるacl5遺伝子の発現量が低下し,24時間後には野生株のレベルまで減少して,サーモスペルミンの合成について負のフィードバックの制御機構が働いていることが示唆された。