抄録
ジャスモン酸(JA)を代表とするジャスモン酸類は,病傷害応答や雄しべの成熟,塊茎形成など様々な生理作用を持つ.12-オキソフィトジエン酸(OPDA)はJAの前駆体であると共に,JAとは異なるシグナルとして機能を持つ.シロイヌナズナでの研究からJAとOPDAの各々に応答する遺伝子群(JRG,ORG)の存在が知られている.JRGは主にF-BOXタンパク質であるCOI1を介してユビキチンプロテアソーム系によって制御され,またORGはCOI1を介さず制御されることがわかっている.
本研究では,JRG,ORGがどのような経路を介して発現しているのかを明らかにするのを目的とし,GeneChipを用いて,coi1変異体におけるJA,OPDAに応答する遺伝子を網羅的に解析した.その結果,知られているようにJRGの大部分はCOI1依存的であり,ORGはほとんどがCOI1非依存的な応答を示すことを確認した.さらにcoi1変異体でもJA処理に対し同様の挙動を示す遺伝子を選び出し,COI1非依存なJRGとして解析を行った.まず野生株でJA処理後30分,3時間における3倍以上の応答を閾値として342個のJRGを得た.さらにcoi1変異体において野生株と同様の強度・プロファイルで応答を示す遺伝子として,55個のCOI1非依存的JRGを得た.また同様に,coi1変異体において応答強度が全体的に低下するものの,野生株と類似したプロファイルを示す遺伝子を39個得た.この中にはVSP1をはじめとする,主要なJRGが含まれていた.これらの遺伝子の詳細な発現解析について報告する.