抄録
インドール酢酸-アミノ酸複合体(IAA-aa)は、IAAの不活性化経路の鍵中間体で、IAA-aa 合成酵素はオーキシン恒常性を制御する重要な酵素である。オーキシン早期誘導遺伝子GH3 は IAA-aa 合成酵素をコードしているが、シロイヌナズナでは複数のGH3が機能重複しているため、遺伝学的手法によりオーキシン不活性化機構を探ることは困難である。そこで、我々は、GH3がアシル活性化酵素ファミリーの一員であり、IAAのアデニル化を経て反応を触媒していることに注目し、反応中間体アナログ阻害剤として、天然および人工オーキシンのN-acylsulfamoyladenosine 誘導体 (sulfamate型) を設計・合成した。これらの化合物は、シロイヌナズナ由来の複数のGH3を強く阻害する活性をもつばかりでなく、in vivoでも活性を示すことを、これまでに発表した。
今回、阻害剤の植物体への取り込みが in vivo 活性を左右することが示唆されたため、より疎水的で化学的に安定な阻害剤を目指して、N-acylsulfamoylaminoadenosine 誘導体 (sulfamide型, acyl = IAA, PAA, NAA, 2,4-D) を設計・合成した。これらの化合物は、酸性・アルカリ性条件下で安定で、またGH3に対してin vitroで高い阻害活性を示した。