抄録
リノレン酸由来の生理活性物質の一つであるα-ketol linolenic acid (KODA)は複数の植物に対し、ストレス耐性の付与、花器官の成長促進作用が観察された。KODAの生合成過程はジャスモン酸(JA)の生合成過程と類似している事が推測された。その過程では、JAと同じ機能を持つが、基質の酸化位置に違いがある二つの酵素lipoxygenase(LOX)とallene oxide synthase(AOS)が触媒作用を行なうと推測された。すなわちJA生合成では13位を特異的に酸化する酵素(13-LOX、13-AOS)が必須であるのに対し、KODAの生合成は9位特異的に触媒する酵素(9-LOX、9-AOS)の働きに依存すると推測された。近年ジャガイモやトマトで、9位特異的な酵素が花茎や塊茎の維管束に局在する事が明らかにされ、リノレン酸由来の生理活性物質の機能解析が急速に進んだ。さらに近年複数の植物に対するKODAの生理機能解析を行なった結果、KODAはJAの影響を受ける事、花茎と花器官の成長に関与する事が示唆された。その一方でモデル植物のシロイヌナズナでは9位特異的なLOX、AOSの情報は不足している。そこで我々は9-LOX及び9-AOSの機能解析とKODAの生合成経路について詳細な検討を行なった。