抄録
フィラメント状のラン藻であるAnabaena sp. PCC 7120は、培地中の硝酸塩やアンモニアなどの窒素源が無くなると、一部の細胞が約10個に1個の間隔でヘテロシストと呼ばれる窒素固定細胞に分化する。このヘテロシスト分化について、分化に関わる転写因子やヘテロシスト膜の形成に関わる遺伝子などが同定されている。また、細胞分裂ができない変異株の解析からヘテロシスト分化には細胞分裂が必要であるという報告もある。しかし、実際に1本のフィラメント上でどのようにヘテロシストが形成されていくのかについては、未だ明らかにされていない。本研究では、1本のフィラメント上におけるヘテロシスト形成を継時的に観察した。硝酸塩存在下で液体培養した細胞を、硝酸塩を含むプレート培地、または含まないプレート培地に移し、Anabaena sp. PCC 7120の一本の細胞列を構成する個々の細胞の形状と自家蛍光を4時間おきに観察し、近接細胞間の細胞分裂および蛍光強度の相関を解析した。その結果、細胞分裂は同期しておらず、分裂せずに分化する細胞も見られた。また,蛍光強度の濃淡には空間的な周期性が見られ、その周期が時間の経過とともに変化した。ヘテロシストの周期性もこの一部と考えられる。