日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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白色子葉形態を示すシロイヌナズナ突然変異体を用いた色素体分化の解析
*庄野 由里子板山 俊一高橋 征司望月 伸悦明賀 史純篠崎 一雄本橋 令子永田 典子
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p. 0684

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抄録
胚形成時に形成される子葉と発芽後茎頂より器官分化する本葉は、組織的・形態的に異なる器官である。我々はトランスポゾンAc/Dsを用いて得られた、白色子葉と緑色本葉をもつシロイヌナズナ突然変異体をapg7と名付け解析を行ってきた。最近、このapg7cyo1という名前で報告され、子葉で分子シャペロン活性を持つことが明らかとなった(shimada et al.,2007)。我々は、apg7/cyo1の子葉だけが白くなるのは、子葉と本葉の色素体分化過程の違いに原因があるのではないかと仮定し、胚形成時から乾燥種子を経て発芽するまでの色素体の形態を、経時的にかつ詳細に透過電子顕微鏡で観察した。野生型の子葉では葉緑体がプロラメラボディをもつプロプラスチドに退化した後再分化したが、茎頂ではプロラメラボディが見られなかった。一方、apg7/cyo1では子葉プロプラスチドからの再分化が異常であったが、茎頂からの本葉の分化は正常であった。さらに、apg7/cyo1の成熟胚を完全明所で培養すると子葉も緑色となり、逆に暗所を介して葉緑体分化をさせると本葉でも白くなった。以上の結果から、apg7/cyo1では子葉特異的に異常が起こるのではなく、プロラメラボディを介する葉緑体分化経路が異常であると考えられた。APG7/CYO1は、プロラメラボディからチラコイド膜を形成するときにだけ機能する分子シャペロンなのかもしれない。
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© 2008 日本植物生理学会
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