抄録
リボゾームDNA (rDNA) の転写は、リボゾーム合成に欠かす事の出来ない重要な反応であり、細胞周期や様々な外環境の変化に応じて厳密に制御されている。しかし、植物におけるrDNA 転写制御に関する知見は皆無に等しい。本研究では、単細胞紅藻 C. merolae を用い、3つのオルガネラ(核、葉緑体、ミトコンドリア)における統御的な rRNA 合成機構を明らかにする事を目的に、その第1段階として、基礎的な解析と実験系の確立を行ったので報告する。
酵母から哺乳類まで保存され、PolIを含む転写開始前複合体の形成に重要な機能を発揮する転写因子RRN3 が、核内の18S rDNAプロモーター上に結合している事をクロマチン免疫沈降 (ChIP) 法により明らかにした。その結合領域は、PolI結合領域と良く一致しており、RRN3の機能が植物においても保存されている事が示唆された。一方、葉緑体rrn16 転写に関わるRNAポリメラーゼσ因子をChIP法にて解析した結果、SIG1がrrn16 プロモーター上に特異的に結合しており、そのレベルは、新規rrn16 合成量と正の相関を示した。実験系の確立に関しては、今までに、3つのオルガネラにおける新規 rRNA 合成量を同時に検出可能な run-on 転写解析系と、細胞抽出液を用いたin vitro 転写解析系の確立に成功しており、これらを用いた解析結果も併せて報告したい。