日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolae における核・オルガネラDNA複製の同調機構の解析
*小林 勇気兼崎 友田中 寛
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p. 0708

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抄録
植物細胞の増殖において、核のDNA複製に先んじてオルガネラのDNA複製が行われる現象が広く知られている。このことから、それぞれのDNA複製のタイミングを調節する機構の存在を示唆されるが、その実体は未だ明らかになっていない。本研究では、オルガネラと核間のDNA複製の調節機構を明らかにすることを目的とし、単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolae(シゾン)を用いて解析を行った。シゾンは核、葉緑体、ミトコンドリアが1つずつの単純な細胞構造をもち、明暗の刺激だけで高度の同調培養が可能である。まず同調培養したシゾンの核、オルガネラ遺伝子の特異的配列を用いたqPCRを行い、それぞれのDNA複製期を簡便に調べる系を確立した。これにより、シゾンにおいてもDNA複製はオルガネラでまず起こり、その後核DNAの複製が行われる事を確認した。次に種々の阻害剤の添加実験を行い、核のDNA複製にはオルガネラのDNA複製が必要であり、オルガネラDNA複製がG1/S 境界に対応するcyclin-CDKとは独立に起こることが判った。また、オルガネラDNA複製がシグナルとなってCDKが活性化され、核DNA複製が開始される事も明らかになった。以上の結果より、葉緑体、もしくはミトコンドリアから核へDNA複製を伝えるシグナルの存在が強く示唆されたため、現在シグナル伝達物質の同定を行っている。これらを踏まえたシゾンにおける核・オルガネラDNA複製の同調機構のモデルを提示する。
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© 2008 日本植物生理学会
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