抄録
GCAは、マダガスカルで交配によりつくられた低カフェインコーヒーであり、高品質の飲料原料となることが期待されている。GCAはカフェイン(Cf)含量の低いCoffea eugenioidesと耐病性の高いC. canephora を交配し、これをコルヒチンにより倍数化後、C. arabicaを交配して得られた。演者らは、C. eugenioidesでは、Cfの合成活性が低く、分解活性高いことが低カフェインの原因であることを報告した。本研究では、GCAでは、どのようなプリン代謝系の変動がCf含量低下の原因となっているのかを調べた。若い葉や未熟果実の切片にCf合成の主要な基質であるAMPに変換される[8-14C]アデノシンを与えると、ヌクレオチドへの合成活性は、GCAと親のCoffea植物とほぼ同様であった。GCAにおいても、AMP、キサントシン、テオブロミンを経由するCfの合成系が認められたが、GCAのCf合成能はC. arabicaの10-50%に低下しており、IMPからプリン分解系へ向かう流れが相対的に増加した。一方、[8-14C]Cfの分解は、C. eugenioidesと異なりGCAでは認められなかった。以上の結果から、GCAが低カフェイン含量となる主因は、Cfの分解能の増加ではなく、Cf合成に関与するN-methyltransferase活性の低下であると推察された。