抄録
植物では限られた窒素資源の有効利用のため、細胞間、そして細胞内のアミノ酸輸送は厳密に制御されていると考えられている。細胞膜上のアミノ酸トランスポーターについては、老化、種子形成などで器官間の窒素転流に密接に関与しているとされる。一方、細胞内でのアミノ酸移動に関わる分子(各オルガネラのトランスポーター)の実体は殆ど知られていない。たとえば、液胞内でタンパク分解によって生じたアミノ酸を細胞質へ供給したり、逆に過剰なアミノ酸を液胞に取り込む仕組みなどよく分かっていない。近年の液胞タンパクのプロテオーム解析でもアミノ酸トランスポーターの候補が見つかってはいるが、実際に液胞膜局在、さらにアミノ酸輸送能が証明されたトランスポーターは未だ報告がない。今回我々は、植物から初めて液胞膜アミノ酸トランスポーターを機能的に同定することに成功したので、結果を報告する。
出芽酵母Avt3は液胞からの中性アミノ酸の排出を担う輸送体である。シロイヌナズナにもAVT3ホモログ(AtAVT3a)が存在し、植物細胞でも液胞膜局在が観察された。さらにAtAVT3aは酵母avt3 変異体における液胞アミノ酸輸送能の欠損を機能相補できることを確認した。現在、植物個体における液胞膜アミノ酸輸送の生理的意義を明らかにするため、遺伝子破壊株の表現型解析を進めている。