抄録
高い水透過性を示す膜タンパク質アクアポリンは様々な生物に存在し、特定の疾病や生理的な機能に大きな影響を与えていることが知られている。近年、コウジカビ(Aspergillus oryzae)RIB40株の全ゲノムの解析が完了し、コウジカビにもアクアポリン遺伝子とされる配列が示された。コウジカビは日本の伝統的な発酵・醸造に利用される有用な重要な微生物の一つであり、このアクアポリンの機能解明と形質転換系の作出はコウジカビの機能の向上や応用に有用と考えられる。そこで本研究ではコウジカビを用いて以下の研究を行った。
1.アクアポリンと定義された遺伝子を分離し、アフリカツメガエル卵母細胞によるアクアポリン発現実験を行った。卵母細胞の膨張率を求めたところ、このアクアポリンはきわめて低い水透過性を示した。
2.上記のコウジカビ菌株を用いて、他生物由来のアクアポリン遺伝子を導入し発現させる実験系の確立を試みた。形質転換用のベクターにα-アミラーゼプロモーター(amyB)に繋いだ外来アクアポリン遺伝子を組み込み、プロトプラスト-PEG法を用いて形質転換を行った。現在、形質転換株についてアクアポリンが過剰発現するための栄養および培養条件について検討中である。また形質転換株のプロトプラストについて、アフリカツメガエル卵母細胞との比較を予定している。