抄録
280―320nmの波長領域の光(UV-B)は環境ストレスとして植物に様々な影響を引き起こす。我々はこれまでに,連続的なUV-B照射は,キュウリ(山東四葉2号)子葉の表面の退緑と,子葉の表面に存在する先端が尖ったトライコームの基部またはその下の細胞の分裂を促進することを明らかにしている。しかしながら,連続的なUV-B照射が,キュウリ子葉の内部に及ぼす影響については不明である。そこで,本研究では,連続的なUV-B照射がキュウリ子葉の内部に及ぼす影響を詳細に解析するために,UV-B照射開始後7日目および15日目のキュウリ子葉を樹脂包埋した後,ウルトラミクロトームを用いて切り出し,光学顕微鏡を用いて解析を行った。その結果,UV-B照射7日目の子葉では,柵状組織を構成する2層の細胞の縦方向の伸長成長が阻害され,また,柵状組織を構成する細胞の細胞壁は波打つような形となった。さらに,UV-B照射15日目の子葉では,柵状組織を構成する細胞の縦方向の伸長成長が,さらに阻害され,また,柵状組織の崩壊が顕著となった。また,表皮細胞については,表面の平滑化と個々の細胞の肥大が認められた。今後は,この現象について経時的に解析するとともに,UV-B照射と細胞死の関係について,分子レベルで解析を進めていく。