抄録
植物の環境ストレス応答において、転写抑制因子群が重要な役割を担っていることが知られている。酵母の塩感受性株を相補する遺伝子として単離されたZAT10/STZは、C2H2型ジンクフィンガーファミリーに属しており、機能的なEARモチーフをもっていることから、特定の遺伝子の発現を抑制していると考えられる。今回、我々は、ZAT10に近縁な5つの遺伝子(AZF1、AZF2、AZF3、ZAT6、ZAT8)に注目し、これらの遺伝子の機能解析を行った。シロイヌナズナのT87細胞から作製したプロトプラストを用いた一過的発現により、これらのタンパク質が核に局在することを確認した。ノーザン解析によって、AZF2とZAT6、ZAT10は、乾燥、塩、低温等のストレスにより発現が誘導されることを明らかにした。また、DEX誘導性プロモーターを用いた過剰発現体を作製し、マイクロアレイ解析を行ったところ、AZF1とAZF2には機能の重複が見られた。さらに、AZF1とAZF2のそれぞれの遺伝子のDEX誘導性過剰発現体は、DEX処理により矮化した。以上の結果より、AZF1とAZF2は、機能的に相補している可能性があり、T-DNA挿入変異体を用いた二重変異体の作製とGUSやGFPレポーターを用いた2つの遺伝子の発現部位の詳細な解析、マイクロアレイ解析による標的遺伝子の検索を進めている。