抄録
低分子量Gタンパク質であるOsRac1はイネ耐病性シグナル伝達経路において、さまざまな抵抗性反応を制御することがこれまでの研究により明らかにされてきた。活性型OsRac1は細胞膜に局在することが知られているが、この細胞膜領域は外部からの刺激を認識し、初期応答をおこなう場所として重要である。その中で、脂質ラフトと呼ばれるステロールやスフィンゴ脂質に富む領域が存在し、シグナル伝達において重要な足場であることが示唆されている。しかし植物においては脂質ラフトに関する情報はほとんど得られていないのが現状である。本発表は、イネの耐病性シグナル伝達における細胞膜領域の役割を調べることを目的としたものである。
イネ培養細胞(金南風)から4℃下でのTriton-X 100処理、ショ糖密度勾配遠心を行い、不溶性画分(DRM)を脂質ラフト画分として得た。この画分に含まれるタンパク質を質量分析装置(LC-ESI/Q-tof)により解析したところ、OsRac1をはじめ耐病性シグナル伝達経路に関わるタンパク質が同定された。また、Hsc70やATPase等、他の植物種で報告のあるタンパク質を本研究においても確認することができた。防御応答において、DRMの関与を詳細に調べるため、イネ培養細胞にエリシターを処理し、OsRac1をはじめDRMに含まれるタンパク質の局在変化について調べたので、これらの結果を紹介する。