抄録
これまでの研究からキュウリやトマトにおいて、短時間のヒートショック(HS)が植物の内生サリチル酸(SA)の蓄積を誘導し、PR遺伝子の発現を上昇させ、病害抵抗性を増強することが明らかになっている。本研究では、HSによる病害抵抗性誘導メカニズムを明らかにすることを目的とし、モデル植物であるシロイヌナズナを用いた解析を行なった。まず、シロイヌナズナのPR-1の発現を指標としてHS処理条件の検討を行なった結果、45℃ 2-3分で十分なPR-1の発現が認められた。45℃ 2.5分のHS処理を行った結果、PR-1は1日後から発現が認められ、SAの蓄積も確認された。また、HS処理3日後に病原性細菌Pseudomonas syringae pv. tomato DC3000の接種試験を行なった結果、HS処理による抵抗性誘導が確認された。HS処理1日後からSA合成遺伝子ICS1の発現が認められ、sid2変異株ではHSによる抵抗性誘導が確認されなかったことから、HSによる病害抵抗性の増強にはSA合成が重要であることが示唆された。現在、病害抵抗性とHS応答の関係を調べるため詳細な解析を進めている。