抄録
植物の生体膜脂質のリノレン酸(18:3)から合成されるジャスモン酸(JA)やJAの前駆体であるオキソフィトジエン酸(OPDA)などの脂肪酸代謝物は、シグナル物質として病害抵抗性反応に関与することが知られている。最近、我々は18:3合成を抑制した系統(F78Ri)において、イネのいもち病菌(Magnaporthe grisea)に対する病害抵抗性が向上することを見出した(Plant Cell Physiol. 2007, 48: 1263-1274)。本研究においては、イネのいもち病菌抵抗性におけるJAとOPDAの役割を調べるため、18:3合成からJAへと代謝する過程において、OPDA合成を触媒するアレンオキシド環化酵素(AOC)とJA合成を触媒するOPDA還元酵素(OPR1、OPR3)に対しRNAi法を用いることによって、OPDA/JA欠損形質転換イネ(AOCRi)、JA欠損形質転換イネ(OPRWRi)を作成した。これらの系統に対し非病原性または病原性のいもち病菌レースを接種し、野生株およびF78Riの病害抵抗性と比較したところ、AOCRiおよびOPRWRiは病原性の有無にかかわらず野生株と同程度のいもち病菌抵抗性を示し、F78Riのように向上することはなかった。さらにAOCRi、OPRWRiにおける病害関連遺伝子(PBZ1、PR1b)の発現を調べたところ、野生株と同様の発現パターンを示した。これらの結果は、イネはJAやOPDA合成を介さずに、いもち病菌抵抗性および病害関連遺伝子発現を誘導できることを示している。