抄録
病原体の侵入を受けた植物では、感染部位及びその周囲で過敏感細胞死(HR)や防御関連遺伝子の発現、防御物質の蓄積などが起こり、次いで植物全体で抵抗性が増大する。しかし、感染部位において「過敏感細胞死」、「防御反応」、および「感染情報伝達」の誘導される順序や場所(時間的・空間的関係)については不明な点が多い。そこで我々は、タバコ培養細胞BY-2と卵菌Phytophthora cryptogeaから得られるタンパク質性エリシターであるcryptogeinを用いて、これらの関係を細胞レベルで解明することを目的として実験系の構築を行なった。様々な増殖・分化状態のBY-2にcryptogeinを投与し、細胞死の誘導パターンを継時的に追跡した結果、細胞密度を105 cells/mlに調整したstationary-phaseの細胞集団を使用することで、効率よく細胞死を誘導できる実験系を確立した。この実験系を用いて、cryptogeinによって誘導される細胞死の過程は核DNAの断片化をともなうことを明らかにした。現在は、細胞死/防御関連遺伝子発現など、cryptogeinによって誘導されるその他の現象について解析中である。また今回、cryptogeinにより誘導された反応やパターンの一般性を検討するため、ニコチンアミドにより誘導されるBY-2の細胞死の過程についても検討を行なったので、その結果についても報告する。