抄録
高等植物の根系の発達は、根端メリステム活性の維持と、新たな側根・不定根の形成能に大きく依存している。根端メリステムでは幹細胞の規則的な分裂により、表皮・皮層・内皮・内鞘など各組織からなる同心円状の放射パターンが形成される。一方、根の成熟領域では内鞘細胞の分裂によって新たな側根が形成される。これまでシロイヌナズナを用いた分子遺伝学的研究により、1)根の放射パターン、特に皮層・内皮の形成に、SHR遺伝子の非細胞自律的な働きによるSCR遺伝子の活性化が必要なこと、2)側根形成開始および側根原基形成に正常なオーキシンシグナル伝達が必要なことが明らかとなった。特に2)に関しては、側根形成能に欠損をもつslr(solitary-root)変異体やarf7 arf19変異体などの解析から、オーキシン応答転写因子ARF7、ARF19とそのパートナーとなるAux/IAAタンパク質(SLR/IAA14など)を介した転写制御が側根形成開始に重要なことを明らかにした。そして、側根形成で機能するARFの標的遺伝子として、植物に特有なLBD/ASL ファミリーに属する遺伝子を複数見出した。さらに、slrのサプレッサー変異体の解析から、側根形成にクロマチンリモデリングが関与することが強く示唆された。本講演では、これらの研究によって明らかになりつつある根の発生機構、特にオーキシンを介した側根形成の制御機構について紹介する。