日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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葉緑体でのアルデヒド生成と光合成への影響
*真野 純一Khorobrykh Sergery
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p. S0024

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抄録
過酸化脂質由来のα,β-不飽和アルデヒド(reactive aldehydes; RAL)は強い求電子性をもちタンパク,核酸を修飾するため,細胞毒性が高い。我々はこれまでにシロイヌナズナから,RALのα,β-不飽和結合を還元し飽和アルデヒドを生成する新規酵素を単離し,2-アルケナールレダクターゼ(AER)と命名した。AER遺伝子はシロイヌナズナへの酸化的ストレスによって発現誘導される。AERを過剰発現させたタバコは,パラコートまたは強光,紫外線,オゾンに対し耐性を示した。すなわちこれらの酸化的ストレス処理により,葉でRALが生成し,それが細胞を損傷すると考えられた。葉緑体に含まれるアルデヒドをLC/MSにより分析し,過酸化脂質由来のRALやプロピオンアルデヒドなどが存在することを見いだした。単離した葉緑体にさまざまなアルデヒドを与えると,ストロマのカルビン回路酵素が失活し,CO2固定が阻害された。CO2固定阻害は飽和アルデヒドよりRALの方が強かった。RALはミトコンドリアに作用し光呼吸も阻害すると示唆されている。AER過剰発現株では,RALによる炭酸固定阻害および光呼吸阻害が抑制されたため,葉の電子シンク容量が保たれ,強光耐性がもたらされたと考えられる。このように,RAL消去活性は植物の重要な抗酸化機能である。
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© 2008 日本植物生理学会
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