日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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揮発性アルデヒドを介した植物―植物コミュニケーション
*松井 健二
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p. S0030

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抄録
植物が病傷害を受けるとその病傷害に特異的な揮発性化合物群を生成・放散する。これら揮発性化合物は病原体、あるいは草食昆虫を忌避する直接防衛と他の生物の介在によって忌避する間接防衛に関与している。また、植物がこうした植物揮発性化合物を受容し、病傷害が差し迫っていることを察知して、自らの抵抗性を高めることが知られてきた。揮発性化合物を介した植物―植物コミュニケーションといえる。植物が病傷害を受けた時に最も早く生成放散される揮発性化合物はみどりの香りと総称される炭素数6のアルデヒド類である。そこで、これらみどりの香りがこうした植物―植物相互作用に関与しているのかについて検討を進めた。
無傷で健全なシロイヌナズナ実生をガラス容器に入れ、(E)-2-hexenalの蒸気に曝すと種々の防御関連遺伝子発現が亢進した。同時に細胞壁のリグニン化、抗菌物質の生成がみられ、灰色カビ病菌抵抗性が高まった。シロイヌナズナ変異体を用いた検討からこうした抵抗性誘導にはジャスモン酸、エチレンを介した信号伝達経路が重要であるがサリチル酸信号伝達経路は関与していないことが明らかとなった。また、グルタチオン生成欠損変異体で多くの誘導応答が消失していたことからグルタチオンが揮発性アルデヒド受容に関与していることが示唆された。こうした知見を踏まえ、植物の揮発性アルデヒド受容機構、またその生態学的意義について考察する
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© 2008 日本植物生理学会
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