抄録
イネには約32,000個の遺伝子が存在すると言われるが、大半は機能未知のままである。多種多様なイネ遺伝子の機能を効率的かつ包括的に解明する手法は、点変異、欠失、内在性や外来性因子の挿入、RNAi等の発現抑制系を利用した遺伝子機能欠損に基づくものが主流で、すでに数々の遺伝子単離に成功している。しかし、約3割のイネ遺伝子が多重遺伝子族として存在することを考慮すると、loss-of-function型アプローチだけでは遺伝子機能欠損がもたらす表現型を検出来ないケースも多数出現すると予想される。その場合、gain-of-function型手法の適用が有望である。イネでは、多数の完全長(FL-)cDNAクローンや高効率遺伝子導入系が活用出来るため、FOX Hunting系の適用が可能である。まず、理研グループが開発した手法に従い、約14000種類の理研イネFL-cDNA群を、イネで任意に過剰発現するためのFOXアグロバクテリウムライブラリーを作製し、イネに導入した。これまでに約12,000系統の独立したFOXイネ系統を作出し、その表現型や導入cDNAの同定や機能解析を進めている。さらに国際科学振興財団(FAIS)由来FL-cDNA群についても、GATEWAY系アグロバクテリウムライブラリーを用いてFAIS-FOXイネ系統を作出中である。これらFOXイネ系統群の解析結果について紹介する。