抄録
種子貯蔵タンパク質は小胞体で前駆体として合成され,小胞輸送によりタンパク質蓄積型液胞へ運ばれ成熟化して蓄積する.貯蔵タンパク質は大量に合成・輸送されるため,小胞輸送をモニターするよい実験系である.この利点を生かし,我々は貯蔵タンパク質の輸送変異体をシロイヌナズナで単離し遺伝子同定とその解析を行ってきた.maigo (mag) 変異体は電気泳動により貯蔵タンパク質の前駆体を指標に,green fluorescent seed (gfs) 変異体は種子のGFP蛍光強度を指標に変異体のスクリーニングを行ったものである.GFSスクリーニングでは貯蔵タンパク質プロモータの制御下で液胞型GFPを発現する植物体を用いている.いずれのスクリーニングも量的に多いものを指標にしているのが秘訣であり,葉など栄養器官の液胞輸送は検出感度の問題で難しい.現在のところ,貯蔵タンパク質の小胞輸送は,内在性の液胞タンパク質の輸送異常を簡便に検出できる唯一の例と言える.得られた変異体には,貯蔵タンパク質の輸送異常のみならず,栄養器官の形態などにも異常を示すのもが多数得られている.これらの変異体の解析を通して,植物の成長や形態形成における小胞輸送の役割についても調べている.