抄録
イネ種子グルテリン及びプロラミンは、小胞体上で生合成された後、小胞体内で分別され、それぞれ異なるプロテインボディ(PB)に輸送・集積される。植物種子貯蔵タンパク質の細胞内輸送・蓄積の遺伝的制御機構の解明のために、MNU受精卵処理によって誘発したイネのグルテリン前駆体を多量に集積する突然変異を解析した。
これらの変異体から、ジスルフィド結合の形成を触媒するタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)を欠損する変異(esp2変異)、小胞輸送に関与するsmall GTPase Rab5aに関する変異(glup4変異)、液胞プロセッシング酵素に関する変異(glup3変異)を同定した。遺伝子の上下位性検定の結果、esp2変異遺伝子が他の2遺伝子に対し上位であり、glup4変異遺伝子がglup3変異遺伝子に対し上位であった。esp2変異体では、小胞体由来の変異型PB内でグルテリン前駆体とプロラミンが混在していた。glup4変異体ではグルテリン前駆体を集積する新規構造体が認められた。glup3変異体ではグルテリン前駆体と成熟型グルテリンが貯蔵型液胞(PSV)内に蓄積していた。これらの結果から、グルテリン前駆体の小胞体からPSVへの輸送蓄積経路において、PDIが小胞体内における分別に、Rab5aが小胞体からの輸送に、VPEがPSVにおけるグルテリン前駆体の開裂に寄与することが明らかとなった。