日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ニンジン胚発生過程における液胞膜アクアポリン遺伝子DcTIP1の解析
*松澤 篤史田中 元気菊池 彰鎌田 博田中 一朗塩田 肇
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p. 0019

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抄録
高等植物の種子は成熟時に脱水して休眠し、その後再吸水して発芽する。そのため、胚の発生・発達には、細胞内外での水の移動が重要であると考えられる。一般に、生体膜を介した水の移動は、膜タンパク質であるアクアポリンによって促進されることが知られている。胚の発生・発達においても、アクアポリンが何らかの生理的役割を果たしていると考えられる。今回は、液胞膜アクアポリン(Tonoplast intrinsic protein:TIP)をコードする遺伝子DcTIP1について、植物胚発生のモデルであるニンジン(Daucus carota)不定胚系での解析結果を報告する。RT-PCRによる発現解析の結果、成熟種子と不定胚でDcTIP1の高い発現が見られた。対照的に、実生、本葉、葉柄、根での発現は低かった。アブシシン酸(ABA)を処理すると、不定胚ではDcTIP1の発現が増加したが、本葉では発現の増加は見られなかった。また、DcTIP1のプロモーター領域には、胚で顕著な発現を示すC-ABI3DcECP40のプロモーターと高い相同性を示す領域が含まれていた。これらの結果から、ニンジンの液胞膜アクアポリン遺伝子DcTIP1は、C-ABI3DcECP40と類似の機構によって発現調節され、胚組織においてABA誘導性の乾燥耐性などの生理現象に関与している可能性が示唆された。
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© 2009 日本植物生理学会
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