日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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小胞体の流動機構の解明~ミオシンに着目して~
*上田 晴子横田 悦雄嶋田 知生新免 輝男西村 いくこ
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p. 0034

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抄録
原形質流動は古くから知られる植物特異的な細胞内運動であり,約50年前に「すべり説」が提唱された.モータータンパク質であるミオシンがアクチン繊維に沿ってオルガネラを運ぶことにより原形質流動が起こると考えられるが,具体的な分子の単離・同定はほとんど進んでいない.我々は,小胞体が激しく流動する現象に着目し,シロイヌナズナを用いて蛍光タンパク質で小胞体を可視化し,その分子機構を解析することにした.小胞体の流動は方向性をもち,非常に速くて絶え間ない.この動きは,蛍光タンパク質で可視化した細胞質ゾルの流動パターンと一致しており,アクチン繊維脱重合試薬やミオシン阻害剤により抑制された.植物ミオシンは独自のクラス(VIII,XIおよびXIII)を進化させ,その中のミオシンXIがオルガネラの運搬を担っていることが示唆されている.シロイヌナズナは13種類のミオシンXIをコードしており,これらのミオシン変異体を用いて,小胞体の流動に関わるミオシンを逆遺伝学的に同定することを試みた.その結果,1つのアイソフォームの変異体で小胞体の流動が著しく抑制されることを見出した.更にこのアイソフォームを含む多重変異体を作製したところ,小胞体の流動がさらに抑制され,小胞体の形態にも異常が観察された.これらの結果から,小胞体の流動には複数のミオシンXIが相補的に機能していることが示唆された.
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© 2009 日本植物生理学会
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