抄録
小胞体はチューブ状構造とシート状構造が three-way junctionと呼ばれる三叉の接続を介して複雑に組み合わさったネットワーク状の構造をとっている.この形態の形成・維持に寄与する因子を同定するため,小胞体の形態に異常を示す変異体を3系統単離し,endoplasmic reticulum morphology(ermo)と命名した.ermo1とermo2では,小胞体に由来する1 μm前後の球状構造体が数多く観察され,ermo2ではそれらが細胞内の一カ所に凝集していた.一方ermo3では球状の構造体は観察されず,小胞体が一カ所に凝集していた.これらの変異体では異常な構造・凝集体の他に正常なネットワークも観察された.マッピングの結果,ermo1とermo2は小胞体ーゴルジ体間の輸送においてそれぞれCOPI小胞とCOPII小胞の出芽に関わると考えられている遺伝子の変異であることがわかった.しかし,これらの変異体において細胞内輸送に明らかな異常は観察できていない.このことから,ERMO1およびERMO2は小胞体の形態維持に関わる新奇機能をもっている,あるいは変異体における輸送異常は検出できないレベルだが,小胞体ーゴルジ体間の輸送が小胞体形態に重要であることが考えられた.また,ERMO2およびERMO3はオルガネラを細胞内に分布させるのに必要であることが示された.