日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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高等植物における核膜孔複合体の動態解析
*田村 謙太郎深尾 陽一朗岩本 政明原口 徳子西村 いくこ
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p. 0033

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抄録
細胞核を包む核膜には多数の孔が存在しており,核膜孔と呼ばれている.核膜孔は細胞質と核を結ぶ唯一の通り道であり,膨大な数の分子の選択的な通過を可能にしている.このような分子流通業務は植物の高次生命現象に重要な役割を担っているものと予想されるが,その詳細な分子機構は全く不明である.核膜孔は約30種類のNucleoporinと呼ばれるタンパク質群によって形成される巨大複合体である.核膜孔の機能と植物体におけるその生理学的役割を明らかにする目的で,シロイヌナズナNucleoporinを解析している.
シロイヌナズナのNucleoporinとGFPとの融合タンパク質をそれぞれ発現させ,生細胞内での動態解析を詳細に行った.最初に免疫沈降実験により,GFPと融合させたNucleoporinは内在性のNucleoporinと複合体を形成していることを確認した.形質転換体を共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ,核膜上にドット状の蛍光が見られた.細胞分裂M期においては,核膜崩壊後から再形成時に,それぞれのNucleoporinが異なる局在パターンを示していた. Nucleoporinを過剰発現する形質転換植物体では,細胞核の形状変化や器官発生の顕著な異常が観察された.このことは核膜孔複合体が核の形作りだけでなく,植物個体の形態形成において重要な機能を担っていることが示唆している.
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© 2009 日本植物生理学会
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