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PsbM, PsbIは光化学系II複合体(PSII)の低分子量サブユニットであり、PSIIの3.0 Å分解能結晶構造において、PsbMは2つのPSII単量体をつなぐPSII二量体の中心部に存在するのに対し、PsbIは二量体の周辺、D1サブユニットの近傍に存在する。これらの存在部位はそれぞれの欠失変異株の結晶構造解析からも確認され、PsbMは二量体の形成・安定化に何らかの役割を持っているが、PsbIは二量体の形成や安定化に直接的な役割を持っていないことが推測された。しかし、それぞれの欠失変異株のチラコイド膜をClear-native-PAGEを用いて分析した結果、いずれの変異株においてもPSII二量体の量が減少し、単量体が増えたことがわかった。従って、PsbM, PsbIのいずれもPSII二量体の形成・安定化に何らかの役割を持っていることが推測された。変異株から精製したPSII二量体をLDAOで処理したところ、PsbM欠失二量体は単量体化したが、PsbI欠失二量体は野生株と同様に単量体化しなかった。これらのことから、PsbMは2つのPSII単量体をつないで安定的な二量体を形成するのに必要であり、一方、PsbIはin vivoでのPSII二量体のアセンブリに必要であるが、一旦形成された二量体はPsbIが結合していなくても安定であることが示唆された。