抄録
これまでに三つのグループから好熱性シアノバクテリアの光化学系II複合体(系II複合体)の二量体の結晶構造が報告されている。また、われわれはこれまでに系II複合体の小サブユニットの変異株を作製し、その機能解析から多くの小サブユニットが二量体の安定化に関与していることを示してきた。今回われわれは、このような系II複合体の二量体構造の安定性を生化学的に検討した。材料として、好熱性シアノバクテリア Thermosynechococcus elongatus BP-1のチラコイド膜を用い、n-dodecyl-β-D-maltopyranoside(DM)で可溶化して、二量体と単量体の回収率をblue-native PAGEによって検討した。その結果、低濃度のDMでは単量体の回収が高く、高濃度では単量体が減少し二量体が増加した。これらの標品を二次元PAGEに展開したところ、系II複合体のタンパク質組成に単量体、二量体による有意な差は見られなかった。これらの結果は、系II複合体の二量体化がDMにより引き起こされる可能性を示唆している。今回の結果に基づいて、系II複合体の安定性と生体内での状態について議論する。