日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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グルタチオンによる二酸化炭素固定の律速
*岩崎(葉田野) 郁小川 健一
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p. 0050

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抄録

グルタチオンは葉緑体に多量に存在するトリペプチドで、光合成によって産生されるATP依存の2段階の反応で合成される。これまでの結果からグルタチオン合成の律速で二酸化炭素固定能が低下し、光化学系電子伝達の低下が起きることと考えられた。そこで、グルタチオン合成が律速されている変異体を用いて、カルビン回路の律速反応を触媒すると考えられているRubiscoと内生グルタチオンとの関係について解析した。内生グルタチオン量が低下したシロイヌナズナ変異体では、葉面積あたりの二酸化炭素固定速度が野生型の80-90%を示した。一方、Rubisco量あたりのRubisco活性は、野生型の80-90%を示したが、葉面積あたりのRubisco活性は野生型と有意な差を示さなかった。以上のことから、グルタチオン量の低下はRubiscoの活性化率の低下を引き起こすが、グルタチオン量低下による二酸化炭素固定速度の低下はRubisco以外にグルタチオンが作用するためであると考えられた。他のカルビン回路酵素アルドラーゼがグルタチオンによって制御されることから、グルタチオン量低下による葉面積あたりの二酸化炭素固定速度の低下はRubiscoではなくアルドラーゼである可能性が考えられる。本発表では、アルドラーゼの量および活性の結果も合わせて、グルタチオン量とカルビン回路の関係について考察する。

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© 2009 日本植物生理学会
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