抄録
Rubiscoの小サブユニットをコードするRBCS遺伝子は核ゲノムにmultigene familyを形成することが知られている。イネにおいては5分子種(OsRBCS1から5 )の存在がデータベース上の情報から確認されているが、それらの発現特性は知られていない。そこで、ここでは、器官別に5分子種のmRNA量を調べた。サンプルとして、幼植物期、栄養生長期、生殖生長期の個体における葉身と葉鞘および根、さらに登熟過程にある種子を用いた。Rubisco量が多い葉身では全RBCS mRNA量も多く、生育ステージの違いによらずOsRBCS2、3、4、5が主要に蓄積していた。したがって、これらの4分子種が葉身におけるRubiscoの生合成を担っていると考えられた。一方、Rubisco量が少ない他の器官、または検出されない根では、全RBCS mRNA量も葉身の20%以下と少なかった。主要な分子種は、葉鞘ではOsRBCS3、4、5、種子ではOsRBCS3、4、根ではわずかにOsRBCS1が蓄積していた。このように、これらの器官では葉身よりRBCS mRNA量が少ないだけでなく、発現する分子種にも違いがあることがわかった。以上のように、イネのRBCS multigene familyは器官ごとのRubiscoの必要量に応じて、分子種ごとに発現量が異なることがわかった。