抄録
Eleocharis viviparaはカヤツリグサ科の植物で、陸生条件下ではC4光合成を行ない、水生条件下ではクランツ構造を持たずC3光合成を行う。この植物はC4光合成の成立に不可欠な遺伝子やタンパク質を探索するのには恰好の研究材料である。この酵素の性状解析は未だ行われておらず、我々はAgarieら (2002) の情報に従いcDNAをクローニングし、E. coliを宿主として組換え体PEPC (EvPEPC) を調製した。精製酵素を用いて以下の知見を得た。(1)単子葉植物のC4型PEPCと同様にグルコース-6-リン酸とグリシンにより活性化され、リンゴ酸とアスパラギン酸により阻害される。(2)昼間にリン酸化され、夜間に脱リン酸化される。そしてリン酸化されるとトウモロコシPEPCと比べるとその程度は弱いが、アスパラギン酸に対する感受性が低下する。(3)これまで調べられたC4型PEPCよりもPEPに対して10倍小さいKm値を示す。
C4型PEPCに特徴的な775番目付近のセリン残基はPEPに対するKm値に関わる部位であると期待され、この残基をC3型PEPCのようにアラニンに置換するとKm値はさらに低くなった。つまり、Km値は775番目のセリン残基よりも他の残基または領域が関わっていると考えられる。他の部位特異的変異による解析の結果についても報告する。