抄録
高等植物は二次代謝経路の最終段階において、低分子化合物を糖修飾することにより二次代謝産物の構造的多様性を増大させると同時に、代謝物の生理活性にも多様性を付与している。Nucleotide activated sugarから低分子化合物への糖転移反応を触媒する糖転移酵素について、一般に、フェノール性水酸基やカルボキシ基に糖を転移して配糖体を生成する酵素については、それらをコードする遺伝子が多数クローニングされ、酵素機能の解析が活発に進められているが、配糖体の糖鎖に糖を転移して特異的に糖鎖伸長のみを触媒する酵素についての報告は極めて少ない。
我々がニチニチソウよりクローニングした糖転移酵素CaUGT3は、フラボノイド配糖体のglucose糖鎖にβ1,6結合によってもう一分子のglucoseを付加する触媒活性を有しており、フラボノイド代謝経路においてその構造多様性に寄与している可能性が示唆されている。本研究では、糖鎖伸長酵素の基質特異性および触媒機構について鍵となるアミノ酸残基を特定することを目的として、CaUGT3のホモロジーモデルを構築し、ドナー、アクセプター両基質とのドッキングシュミレーションを行った。今後、得られた複合体モデルをもとにsite-directed mutagenesisによる変異酵素を作製する予定であり、その結果も合わせて報告したい。