抄録
陸上植物は固着性であるため、環境ストレスに直接さらされており、種々の遺伝子発現や代謝を調節して様々な環境に適応していると考えられている。低温ストレス環境下においても、多くの低温誘導性遺伝子が発現していることや糖・アミノ酸の蓄積量が増加していることが報告されている。シロイヌナズナにおいては、低温誘導性転写因子DREB1Aの研究報告が数多くあり、DREB1Aを恒常的に過剰発現させた形質転換植物は、低温ストレスに対する耐性能が向上することから、DREB1Aが制御する下流遺伝子は、低温耐性の獲得において重要な役割を果たしていると考えられた。この下流遺伝子がコードするタンパク質には、LEAタンパク質、解毒酵素、シャペロン、プロテインキナーゼ、転写因子、葉緑体膜タンパク質などが存在する。
我々は、DREB1Aが制御する葉緑体膜タンパク質遺伝子に注目して研究を行った。この遺伝子は、6遺伝子で構成されるファミリーに属している。この遺伝子がコードするタンパク質の組織特異性を、GFP融合タンパク質を作製して調べた結果、常温条件下では孔辺細胞の葉緑体に局在し、低温ストレス条件下では、孔辺細胞に加えて葉肉細胞の葉緑体にも局在していることが明らかになった。さらに、この遺伝子を恒常的に過剰発現させた形質転換植物を作製して、葉緑体の代謝産物をGC/MSで測定して比較解析を行った。