日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

被食害リママメから放出される揮発性化合物が誘導する健全リママメのハダニ抵抗性誘導
*杉本 貢一松井 健二小澤 理香藏滿 保宏田中 寿幸中村 和行Muck AlexanderKley JeannetteDavid AnjaBoland Wilhelm高林 純示
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0086

詳細
抄録
植物は様々な環境ストレスに応答して量的・質的に異なる揮発性化合物を放散する。このような誘導性揮発性物質(Induced Plant Vlatiles:IPV)放散する生理学的・生態学的意味の解明は、植物の生存戦略における新たな視点を提供すると考えられる。これまで、病・傷・食害をうけた植物の周囲に生育している健全植物が抵抗性を誘導する例が報告されており、IPV介した植物間相互作用であると考えられている。本研究ではハダニ食害を受けたリママメが多量のIPVを放出し、そのIPVに暴露された健全リママメが様々な防衛関連応答を示す現象に注目する。IPVの生理的役割を明らかにするため、揮発性化合物曝露装置を作製した。このシステムを用いてIPVを健全リママメに曝露した結果、曝露植物は防御関連遺伝子の一つであるキチナーゼ遺伝子を誘導した。続いて雌ダニの産卵数を指標としてハダニ食害抵抗性を評価したところ、曝露植物では対照植物と比較して有意な産卵数の低下が観察された。続いて植物のIPV応答を調べるため、タンパク質プロファイルを健全植物と比較したところ、PsbOやATPaseのような光合成関連タンパク質が減少する傾向にあった。これらの結果から、健全リママメは、IPV認識することでハダニ食害応答を模倣し、ハダニ抵抗性を誘導することが示された。今後はIPVによる抵抗誘導性のメカニズムを明らかにする。
著者関連情報
© 2009 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top