日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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リママメの間接防衛に及ぼすハダニ由来の微生物の影響
*小澤 理香植田 浩一松田 一彦高林 純示
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p. 0087

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抄録
植物には食害に対して特異的な揮発性物質(Herbivore Induced Plant Volatiles: HIPVs)を放出し、植食者の天敵を誘引することにより、間接的に防衛するものが知られている。我々はこれまでにリママメ葉を用いて、ナミハダニによる食害では、チョウ目幼虫による食害では見られないサリチル酸(SA)の蓄積やSA誘導性の防御遺伝子の発現が認められ、異なるブレンドのHIPVが放出されることを見出した。このナミハダニ被害植物におけるHIPVの特異性は、ハダニ由来の微生物が食害時に植物内に注入されることによるSA経路の活性化に起因すると考えられる。このことを検証するために、卵を殺菌し無菌環境で飼育したハダニ(無菌ハダニ)を調整し、これによる食害リママメと、無菌化処理を行っていないハダニの被害リママメとの比較を行った。その結果、両被害株ではHIPVのパターンが異なり、予想に反して無菌ハダニ被害植物でSA量が多く、それに伴うSA誘導性遺伝子の発現量の促進も認められた。これらの結果から、ハダニ由来の微生物により食害される植物の応答が変化し、HIPVの違いを導いていると考えられた。さらにナミハダニの捕食性天敵が、無菌ハダニ被害株のHIPVに対してより誘引される傾向が観察されることから、ハダニ由来の微生物が、食害された植物の天敵誘引という間接防衛を抑制している可能性が示唆された。
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© 2009 日本植物生理学会
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