抄録
植物は病原体のMAMP(microbe-associated molecular patterns)を認識し、防御応答を誘導する。最近我々は、MAMPによって誘導される病原細菌Pseudomonas syringae pv. tomato DC3000 (PstDC3000)に対する抵抗性は、サリチル酸 (SA) シグナリングに部分的に依存していることを報告した。ジャスモン酸 (JA) やエチレン (ET) を介したシグナリングは一般的に、SAシグナリングを抑制し、この病原体に対する抵抗性に負の影響をもつと考えられている。我々は、JA, ET, SAシグナリングを司る遺伝子(DDE2, EIN2, PAD4, SID2)に変異を持つシロイヌナズナ変異体から四重変異体を作製し、これらのシグナリングが、防御応答シグナルネットワークにおいて協調的に働く可能性を調べた。驚くべきことに、MAMPの一種であるflg22によって誘導されるPstDC3000への抵抗性の80%が、この四重変異体において消失した。この結果は、次のことを示唆している。1)flg22が誘導する抵抗性に寄与するシグナルネットワークの大部分がこれらの4つの遺伝子によって制御される。2)JA/ETシグナリングはMAMPによって誘導されるPstDC3000への抵抗性に正に寄与する。