日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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栽培イネと野生イネの種間交雑にみられる胚乳発生異常の原因
*石川 亮永口 貢新崎 由紀倉田 のり木下 哲
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p. 0114

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抄録
多くの植物では、種間や倍数体間の交雑を行うと胚乳発生が抑制、あるいは促進される異常により生殖隔離が生じることが知られている。この現象には、父親ゲノムと母親ゲノムの拮抗関係を担うゲノムインプリンティングが関わっていることが示唆されているが、その実体は明らかではない。
本研究では栽培イネと様々な野生イネを用いた間交雑を行い、雑種胚乳の発生について樹脂切片を作成し、ステージを追って解析した。胚乳では受精後、胚乳核が多核体を形成したのちに、細胞化がおこる。雑種胚乳では、細胞化、中心液胞の消失、デンプン蓄積などの発生のタイミングが早まること、もしくは遅延が種間の組み合わせにより観察された。しかしながら、この過程での胚乳の核分裂率にはどの組み合わせにおいても殆ど変化が見られなかった。従って、種間交雑で見られる胚乳発生の抑制や促進は、細胞分裂異常によるものではなく、ヘテロクロニックな発生異常が原因であることが明らかとなった。さらに、O. sativaO. longistaminataの雑種胚乳を用いたマイクロアレイ解析の結果から、雑種胚乳特異的に発現が上昇する遺伝子群として、シロイヌナズナのインプリント遺伝子PHERES1と相同性の高い遺伝子が同定された。本発表では、野生イネと栽培イネの雑種胚乳におけるヘテロクロニックな発生異常と、これらの原因となる分子機構について考察したい。
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© 2009 日本植物生理学会
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