抄録
BiPは小胞体内腔に存在するHsp70であり,シロイヌナズナにはBiP1, BiP2, BiP3という3つのBiP遺伝子が存在する.BiP1とBiP2は植物全体で発現しているのに対し,BiP3は小胞体ストレス条件下でのみ発現が誘導される.われわれは3つのBiP遺伝子のうち,BiP1とBiP2をともに欠損すると雌性配偶体致死となることを見出し,これが極核融合欠損によることを明らかにした.透過型電子顕微鏡観察の結果,bip1 bip2二重変異の雌性配偶体ではこの2つの極核は近接するが,核膜融合が起きていないことが示された.BiPは出芽酵母においても接合時の核膜融合に必要とされるため,BiP依存の核膜融合機構は種を超えて保存されていることが示された.出芽酵母では小胞体のJタンパク質であるSec63pとJem1pがBiPのパートナーとして核膜融合に機能する.シロイヌナズナには2つのSEC63,1つのJEM1オルソログが存在するが,これらの単独欠損株は雌性配偶体形成に欠損を示さなかった.現在,これら遺伝子の二重変異体についても解析を行っている.