日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

シロイヌナズナの花の分裂組織の可塑性研究
Ng Kian-Hong*伊藤 寿朗
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0115

詳細
抄録
植物は動物とは異なり、一生を通して幹細胞を維持し、その生長は幹細胞の絶え間ない増殖と分化のバランスに支えられている。従って植物はたとえ体の大半を失ったとしても、分化しつつある細胞が脱分化し幹細胞を再生することで、継続的な生長を維持することができる。私たちは、これまで記述されながらも分子機構の理解がほとんど進んでいなかった植物分裂組織の再生現象に着目し、植物幹細胞の可塑性と器官再生を動的な生命システムとして解明することを目指している。シロイヌナズナにおいてはホメオボックスタンパク質WUSCHELが幹細胞の維持に必要であることが示されている。WUSは茎頂、花序、花芽すべての分裂組織において機能し、特に花芽においては特定の領域に決まった数の花器官原基を形成した幹細胞の機能は消失する。私たちは核タンパク質の一つであるGIANT KILLER (GIK)が花序および花芽においてWUSの発現を抑制する機能を持つこと見つけた。GIKは核マトリクスに結合するタンパク質であり、WUSをエピジェネティックな制御により抑制していた。さらに一過的なGIKの発現誘導により、消失した幹細胞は時間変化とともに2つ、もしくは3つの分裂組織として再生した。本発表ではGIKによるWUSの抑制機構、分裂組織の再生へといたる機構について論じたい。
著者関連情報
© 2009 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top