抄録
葉緑体における光合成タンパク質の高蓄積は、核遺伝子由来の多数の因子の機能に大きく依存している。我々は、正の遺伝学的解析により、RuBisCOを含めた光合成タンパク質の高蓄積に関わる新規な因子を同定することを目的に、EMS処理により突然変異を誘起したシロイヌナズナの中から、RuBisCO蓄積量が低下したnara (genes necessary for the achievement of RuBisCO accumulation ) 変異体を選抜した。その中で、nara5-1 は最もRuBisCO蓄積量が低下した変異体であり、RuBisCOのみならずプラスチド遺伝子にコードされる光合成タンパク質量の著しい低下を示した。マップベースクローニングにより、nara5-1 は機能未知のphosphofructokinase(pfkB) -type carbohydrate kinase family proteinをコードするAt4g27600の点変異体であることが判明した。nara5-1とNARA5を欠損したT-DNA挿入株を用いた緑化過程における葉緑体遺伝子の発現解析から、NARA5はrbcLを含むいくつかの光合成遺伝子群の高発現に大きく寄与していることが明らかとなった。本発表では、NARA5と葉緑体の光合成遺伝子発現について議論する。