抄録
最近、我々は、常温性の中心目珪藻Chaetoceros gracilisから、酸素発生光化学系II(PSII)標品を単離し、その諸性質を明らかにしてきた。しかし、このPSIIは失活しやすい不安定な標品で、大量のFCPが結合している。そこで、本研究では、より安定なPSIIを精製する目的で、石垣島から採集された中心目珪藻Chaetoceros neogracileを用いてPSIIの精製を試みた。この珪藻は、35℃で最もよく生育し、40℃でも生育可能な中等度好熱性珪藻である。35℃で培養した珪藻を凍結融解により細胞破壊した後、チラコイド膜を調製した。チラコイド膜をTriton X-100処理した後、遠心分画により粗PSIIを得た。この粗PSIIには大量のFCPが結合していたので、再度Triton X-100処理した後、イオン交換カラムにより、FCPを除去したPSIIを精製した。この精製したPSIIは、PsbO, PsbQ’, PsbV, Psb31, PsbUの5種の表在性蛋白を結合し、約2,000 μmol O2/mg Chl/hの高い酸素発生活性を示した。活性にイオン要求性はみられず、DCMUにより完全に阻害され、還元側も酸化側も正常な標品である。この標品の熱安定性や色素組成について報告する予定である。