日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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エネルギー代謝補酵素による植物代謝亢進
*高橋 秀行高原 健太郎橋田 慎之介川合 真紀
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p. 0174

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抄録
エネルギー代謝補酵素(NAD(P)(H))は、生体内で数百に及ぶ酸化還元反応を触媒する脱水素酵素の補酵素である。従来、これらの補酵素は細胞内レドックスの調節因子と考えられてきたが、近年の研究から、補酵素自体の量も重要であることがわかってきている。NAD(P)(H)の合成経路には、NAD合成酵素、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ、NADリン酸化酵素(NADK)の3種類の鍵酵素が存在し、主にこれらの酵素群によって量的変動が制御されていると考えられる。本研究では、NAD(P)(H)量の変動による植物代謝への影響を見出し、NAD(P)(H)による代謝調節機構を明らかにする。
NAD代謝を改変したシロイヌナズナ形質転換体を代謝解析した結果、NADP量の減少によって光合成が阻害された。さらにNAD(P(H)を変動させることで代謝の変動を示唆する結果も得られたことから、NAD(P)(H)は植物代謝の調節因子であることが予想された。今後の解析から、個々の補酵素の代謝調節因子としての働きが明らかになると考えられる。NAD(P)(H)を利用した代謝改変技術が確立すれば、植物の能力や品質向上を目的としたデザイン育種の新たな戦略として、応用が期待できる。
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© 2009 日本植物生理学会
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