抄録
緑色光合成細菌は、クロロゾームと呼ばれる特別な光収穫アンテナを有している。クロロゾームは、脂質一分子膜が作り出す疎水性環境下で多数の機能性クロロフィル色素分子を秩序立てて内包し、タンパク質の関与無しにアンテナ器官を形成することがわかっている。このクロロゾームの脂質一分子膜は、様々な光合成生物に普遍的に存在が確認されているグリセロ糖脂質であるモノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)などから構成され、MGDGが極性脂質の60%を占めている。しかし、緑色細菌のMGDGを分子そのままで解析した例はほとんど無い。また存在が示唆される二糖構造を有するラムノシルガラクトシルジアシルグリセロール(RGDG)に至っては、そのような報告例は皆無である。そこで本研究ではBligh&Dyer法にて脂質成分を総抽出後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行って糖脂質成分を分画した。この分画成分をLC-ESIMS及びLC-ELSDで分析を行い、異なる脂肪酸組成を有する糖脂質類の定量的解析に成功した。脂肪酸の結合部位(Sn-1位及びSn-2位)の同定は、リパーゼを用いた位置選択的な加水分解によって行った。培養至適温度が45°CであるChlorobium tepidumを25°Cで培養したところ、糖脂質類の脂肪酸組成が大きく変化することも見出したので合わせて報告する。